推薦作品:新世界の敵、日本国 原作:原作:日本国召喚
『日本国召喚』の世界で、「日本とグラ・バルカス帝国の転移位置が逆だったら」という想定で始まる「What if」ストーリー。連載開始当初、既にメジャーな存在だった〈創作家ZERO零〉氏(以下、ZERO... (全文表示)
『日本国召喚』の世界で、「日本とグラ・バルカス帝国の転移位置が逆だったら」という想定で始まる「What if」ストーリー。連載開始当初、既にメジャーな存在だった〈創作家ZERO零〉氏(以下、ZERO氏)が、敢えて正体を隠して投稿していた実験的作品です。2023年5月現在「最も更新が待ち望まれている『召喚』二次」と言えるかと思います。 ある感想への返信でZERO氏自身が触れている通り、実はこの設定、本作が1番手ではありません。先例となる作品は、残念ながら未完のままとなっていますが……。「日グ逆転」は多くの人が思い付きそうな設定ではあるものの、この先例から本作の初投稿まで、4年ほど待たなければならなかったことを考えれば、意外とハードルが高いテーマなのかもしれません。 本作の特徴は、「好みが分かれる」ことでしょうか。特に開始当初は、感想欄以外の場所でも議論百出。『こういう話が読みたかった』『こんな話のどこがいいんだ』といった正反対の声が飛び交い、まさに「新敵ショック」の様相を呈していました。 そのインパクトは強烈で、この作品を模倣した一次小説が『小説家になろう』に出現したほど。兵器の強さや戦闘の過激さ、軍事描写の精密さではなく、ストーリーそのもので衝撃を与えられる希有な作品といえるかもしれません。感想欄が最も賑わっている作品でもあります。▼読む際の注意事項など これから読む人が注意すべきは、初期の頃のストレス展開です。実は私も、読み始めた当初は「こりゃあキツイなぁ」と思ったクチでしてね。右も左も分からぬ異世界で追い詰められ、どんどん闇堕ちして行く恐怖感。誤解が誤解を生み、やる事なす事が裏目に出る絶望感。明るい話の多い『召喚』二次の逆を突くエピソードが、とにかく目白押しなのです。 しかし、それだけ作中の日本に対する感情移入もしやすく、「負けるな!」「やったれ!」という気持ちにさせてくれるのも確か。また、周りが敵だらけの絶望的状況でも、少数ながら理解を示してくれる存在がいたりして、ほのかな希望を持たせてくれる優しさも忘れていません。 加えて、原作中の国家やキャラの言動が意外な所で使われていたりするので、言葉を丹念に拾って行く楽しみもあります。「ほぉ~、ここでそれ使いますか」という感じで、原作へのリスペクトが伝わって来る部分です。 タイトルからして不穏すぎる、『召喚』二次史上最大の問題作。閲覧注意ではあるものの、それだけでは終わらない懐の深さも備えた秀作です。オススメ!
推薦:ブライストン 評価:★ (参考になった:15/ならなかった:1)
推薦作品:大日本帝國召喚 原作:原作:日本国召喚
『大日本帝國召喚』は、2022年7月1日の連載開始以来10ヶ月半で160話超えという、驚異的なペースで更新され続けている作品です。かなり複雑に入り組んだ内容の話を、平均で2日に1回投稿するって、並大... (全文表示)
『大日本帝國召喚』は、2022年7月1日の連載開始以来10ヶ月半で160話超えという、驚異的なペースで更新され続けている作品です。かなり複雑に入り組んだ内容の話を、平均で2日に1回投稿するって、並大抵じゃありません。 さて、『日本国召喚』二次創作の中で、最もポピュラーなタイトルが『大日本帝國召喚』でしょう。そんな「ありふれた」タイトルを持つ本作ですが、「そういう目」でリンクをクリックするのは考えもの。めまいがすること請け合いです。もうね、「異様」なのですよ。 まずタグが異様。普通タグって「アンチ・ヘイト」とか「原作改変」とかが並びますよね? そのイメージで本作のタグを見てみると……『R-15』『残酷な描写』――ここまでは普通。問題は次から――『大日本帝国』『満州国』『政治』『憲法』『法律』『勅令』『通達』『議事録』『速記録』『新聞記事』『報道番組』『手記』『書籍』『経済』……え~っとぉ、何の二次創作でしたっけ?? 次に目次が異様。いきなり『帝都新聞朝刊 2675年(平成27・2015)年1月29日』ですよ。しかも数字は全角! こんなのがズラ~ッと下の方まで並んでるんです。スゴイのになると、漢字が30個、中黒もスペースもなく並んでるタイトルがあったりします。何の罰ゲームですか!? そして最も異様なのが中身。どの話でもいいので、とにかく開けてみて下さい。前述のタグが嘘ではなかった事を、思い知ることになります。軽~い気持ちで手を付けたら、挫折すること間違いなし。「上等だ。召喚ファン舐めんな!」って思うなら、ハラ括って読んでみなはれ――面白いから。▼読む際の注意事項など 上でもちょっと触れましたが、「とっつきにくい」のが本作の特徴。まさにタグ通りの内容なので、生半可な覚悟で開けるとイキナリ挫折します(実は私も初回トライはあえなく爆死)。 文章は全体的に堅めです。中でも極めつけは政府間の協定書の類いで、「漢字カタカナ混ジリ文」で書かれていたりするので、読み切るには気合が要ります。しかも、意外にも(?)ムダな所がないので、シッカリ読んでおかないと後で損をします。 私見ですが、本作を楽しむコツは、「充分に時間を取って、文字を丹念に拾って行く」ことです。そして可能なら読み返す。私も最近は2~3回読むのがルーティーンになりました。 トバさず丁寧に読んで行くと、かなり後になって「あの時のアレ、ここにつながってたのか!」というような発見が沢山あるんですよ。これは伏線というよりは、法律の条文に近い感じ。「ちゃんと書いてあったよね?」と、作者〈もなもろ〉氏がニヤリとするのを感じます。 展開は激遅。なにしろ、普通の二次作品なら数話でクリアしちゃう「ロデニウス戦役」が、130話を超えた今でも「絶賛講和交渉中!」ですからねぇ。でも、日本って国は良くも悪くも、こういう面倒な手続きを踏んで少しずつ動くんですよ、きっと――というのを、本作を読むとしみじみ感じます。 読み手を選ぶ異様な作風ながら、「戦闘はひと休みして、召喚ネタでジックリ読書でもしてみるか」という人には間違いなくオススメの一品。スルメのような味わい深さを提供してくれる名作です。
推薦:ブライストン 評価:★ (参考になった:22/ならなかった:7)
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