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推薦作品:艦娘の集まる病院で働いてます 原作:原作:艦隊これくしょん
われわれ現代人で病院の世話になったことのない者など皆無だろう。入院や通院の経験のない者であっても生まれた場所は病院であるはずだ。また、肉親の死に病院で立ち会った者も少なくないであろう。 病院で生... (全文表示)
われわれ現代人で病院の世話になったことのない者など皆無だろう。入院や通院の経験のない者であっても生まれた場所は病院であるはずだ。また、肉親の死に病院で立ち会った者も少なくないであろう。 病院で生まれ、病院で死ぬ。病院とは一個の施設である以上に、多くの現代人にとって、はじまりと終わりを迎える一種特別な場所である。 それは人間の体を器に生を受けた艦船……艦娘たちにとっても同様なのかもしれない。病院ではなく工廠で誕生したのだとしても、彼女たちに入渠で癒せぬ傷があったとしたら、艦娘のための病院が存在することはむしろ当然といえる。 病気は治療によって駆逐するものだという認識を無意識に有している人間は少なくない。しかし、いわゆる難病のように、完治が不可能な疾患は驚くほど多い。じつは現代医療では風邪すら治すことはできないのだ。医者にできることは、熱を下げ、咳を止め、嘔吐を抑え、消耗した体力を点滴で補充することくらいである。結局は、患者自身の体が生きようとする力に頼るしかない。 艦娘専門の医師として診察に当たる本作の主人公も、刻一刻と進行する患者の病状に無力を覚え、かのブラックジャックが「医者はなんのためにあるんだ」と慟哭したように苦悩する。しかし、それでも彼はやはりブラックジャック同様に、患者ひとりひとりと向き合うことを諦めない。きょうも彼を頼って診察に訪れる艦娘たちのために、微力かもしれないが全力で、持てる知識と技術を総動員し、医者の本分を果たすべく尽力する。 それでいて、けっして独りよがりに治すことしか考えないのではない。疾患も自分の体の一部として病と付き合っていく選択肢だってある。どんな難病であっても、たとえ治ることがなくても、彼だけは最期までそばに付き添ってくれる。その希望があるから自暴自棄にならずにすむ。その時がくるまで自己の尊厳を保っていられる。それこそが彼女たちの魂の救済であろう。▼読む際の注意事項など ブラックジャックやDr.コトーなどのように天才的外科医が神のようなメスさばきで見事に患者を救っていく……という主旨の物語ではない。時間薬という言葉もあるように、手術や投薬ではなく時間だけでしか癒せない病とてある。彼にできることは、医療の本質がそうであるように、寄り添うことが主である。静かに穏やかに話が進むぶん、わかりやすい刺激がないと感じる人もいるかもしれない。だがわたしは、それこそが本作の魅力であると断言させていただく。
推薦:蚕豆かいこ 評価:★ (参考になった:49/ならなかった:11)
推薦作品:親子 原作:原作:ダークソウル
不死になり、ロードランへと旅立った大好きな父ジークマイヤー。その父に母が遺した最期の言葉を伝えるという使命を果たすためにロードランへと辿り着いた娘ジークリンデ。道中出会った親切な旅人の助けもあり、無... (全文表示)
不死になり、ロードランへと旅立った大好きな父ジークマイヤー。その父に母が遺した最期の言葉を伝えるという使命を果たすためにロードランへと辿り着いた娘ジークリンデ。道中出会った親切な旅人の助けもあり、無事父と再会し、使命を果たすことが叶った。しかし、それからしばらく後、彼女が灰の湖にて父と再会した時、既に在りし日の優しき父の姿はなく、絶望し正気を失った亡者となっていた。そして、彼女は勇敢な騎士であった父の娘として最後の使命を果たす……。 大らかな性格と英雄にふさわしい勇ましさの二つを持ち合わせた「ダークソウル」における人気キャラクターであるジークマイヤーと、その娘ジークリンデの最終イベントに至る過程を描いた4000字程度の短編作品である。 原作中では主人公がイベントに辿り着く頃には、灰の湖の篝火前で息絶え大の字になったジークマイヤーと、その傍に立ち尽くし悲しみに暮れるジークリンデの姿……という状態であるため、そこに至るまでの過程を想像して書いているのが本作品の特徴だ。実際に原作をプレイしている時はあのジークマイヤーが死んだ、という事実に唖然とさせられた者も多い印象に残るイベントであろう。 題名である「親子」が指す通り、父と娘の親子愛を描いた作品である。原作中ではジークマイヤーとジークリンデの関係についてはあまり深く語られることはないため、二人がどのような親子関係であったかを作者が本作品を通して想像しているのが面白いと感じた。 一方、「もし父が亡者となったのならば娘である自分が責任を持って何度でも殺す」そう固く決意したものの、自身と同じカタリナの鎧を着た父の姿を目にすればその覚悟も揺らぐ。しかし、正気を失った亡者となった父を放っておけば人を襲い傷つける……というジークリンデの葛藤が本文中の描写からも感じ取ることができた。 原作中で武器や防具などのテキスト等からでしか殆ど人物関係というものが語られることがないからこそ自由に物語を想像し、プレイヤー達が生み出していくことができるのだというフロム作品の魅力を教えてくれる作品であるといえる。
推薦:すいか 評価:★ (参考になった:44/ならなかった:7)
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