推薦作品:新訳 そして伝説へ・・・ 原作:原作:ドラゴンクエスト
ドラゴンクエストⅢの二次創作。勇者を主人公として世界を旅して人々を救い、魔王を倒す過程を描く。 どちらかといえば全体的に『重い』雰囲気の物語ではあるが、(主に四人目の仲間のおかげで)適所に息抜きの... (全文表示)
ドラゴンクエストⅢの二次創作。勇者を主人公として世界を旅して人々を救い、魔王を倒す過程を描く。 どちらかといえば全体的に『重い』雰囲気の物語ではあるが、(主に四人目の仲間のおかげで)適所に息抜きのようにほのぼのとしたキャラのやり取りが挿入されていて、結果としてメリハリのある『重厚感』あるストーリーに仕上がっていると言える。 一番の見どころはレビュータイトルに書いたように登場人物たちの成長だろう。 心に影があり人を信じない勇者、頑なで考えごとの苦手な戦士、教会の教えを信じ勇者の思想を拒絶する僧侶、そして強大な魔力を持ちながら心身ともに幼い魔法使い。 最初は事あるごとに衝突していた彼らがほんの少しずつ歩み寄り、お互いの考えに同調しないまでも理解をしていく。支え合うというには少々不器用で不格好な彼らだが、ときに旅中の経験により自身の根源的な思想が否定されても前を向けるだけの強さや絆を持つこととなる。その過程が上手く描かれていて、読者はキャラの成長を実感するとともに、どんどんと惹き込まれていくことだろう。 キャラの中でも特筆すべきは、幼い魔法使いの扱いについて。 彼女は、よくありがちなやけに物分かりがよかったり無邪気なだけだったり変に精神年齢の高い「なんちゃって幼女」ではなく、いい意味で「リアルな幼女」だ。 子どもらしく何度も過ちを犯すし、怒られれば落ち込むし、若干控えめながら我儘を言うし、時々言うことを聞かないし、勝手に行動するし、自分の意見が通らなければ拗ねるし、仲間同士が争っていると泣きそうになるし、良くも悪くも物事を純粋に見ている。 彼女に対する他の仲間の対応も大人としてしっかりしており、頭ごなしに『怒る』のではなく、諭すように『叱る』ことができているのもポイントだろう。 ……他のキャラについても個別に語りたいが、そうすると長くなりすぎるので涙を飲んで割愛させていただく。 次に、設定もゲーム内のものとリアル性を上手い具合にすり合わせできている。 大まかなストーリーとしてはゲーム原作の流れとほぼ同じように進行していくが、それぞれの国としての立場やそこに住む民たちの思想などの描写を勇者一行の思想と絡めることにより、ストーリーに厚みを持たせることに成功している。 呪文や魔物の強さなどについての調整も絶妙で、シビアで緊迫感のある熱い戦闘をも演出できている。 難点を挙げるなら、二次創作小説に軽快さや爽快感を求めている人には敬遠されがちということだろう。敵をズバズバと蹂躙する派手さなどとは無縁だし、描写は濃くも薄くもなく程よいとは思うが、雰囲気に引きずられて重く感じてしまう人もいるかもしれない。 そんな人にも是非一度、このレビューに少しでも興味を持ってくれたならばご覧いただきたいと思う。 いつの間にか登場人物たちに感情移入し、物語にのめり込んでいるはずだ。
推薦:祐茂 評価:★ (参考になった:51/ならなかった:6)
カミュという一人の少年がいた。どこにでもいる普通の少年だった彼、その父の名は『オルテガ』……島国アリアハンが生んだ救国の英雄にして、魔王討伐を果たすべく世界から希望を託された存在であった。偉大な彼の... (全文表示)
カミュという一人の少年がいた。どこにでもいる普通の少年だった彼、その父の名は『オルテガ』……島国アリアハンが生んだ救国の英雄にして、魔王討伐を果たすべく世界から希望を託された存在であった。偉大な彼の父は魔王を討ち果たすべく旅立ち、そして……還らなかった。月日は流れ、英雄の息子として人々の期待をその身に受け続けたカミュ。人々が彼に求めたのは世界を救う『希望としての存在』であったのか、それとも自己保身の為の『生贄としての存在』であったのか……そこに立っていたのは、絶望の影をその瞳に宿した、多くの人々の知る『勇者像』から遠くかけ離れた一人の青年の姿だった……ドラゴンクエストⅢの世界をあくまでリアルに描き切ったこの作品は、従来のゲーム小説とは一線を画した本格ファンタジー小説です。人間が本来持っている暗く淀んだ闇の部分にまで深く踏み込み、そして描かれたこの世界は読者を不安や後悔の境地に誘うかもしれません。しかし、どんな苦難をも悩みながら傷つきながら先へ先へと進んでいく主人公たち四人にきっと共感できるはずです。2017年10月2日、堂々の完結。全277話(途中解説回含む)総計385万文字の超大作ながらも、骨子のしっかりとしたこの物語は、まったくブレることのないままに新たな展開を紡ぎだし続けます。世界を7年もの歳月にて駆け巡る大冒険。ドラゴンクエストのファンの方のみならず、ファンタジー小説好きの方に是非お読みいただきたい小説です。▼読む際の注意事項などクオリティーの高さから公式と比べられがちになる作品ですが、あくまでドラゴンクエストの二次小説であり、非公式小説として納得の上読むことを推奨します。鬼門とも呼べる残酷な描写の回が数か所存在します。前書きに注意がついていますので、読む前に確認をしましょう。
推薦:こもれび 評価:★ (参考になった:25/ならなかった:2)
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