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推薦作品:再上映 原作:原作:ウマ娘プリティーダービー
閲覧数や評価数の面ではあまり目立っていませんが、佳作と言って差し支えない作品だと思います。「頑張り賞」的な意味の佳作ではなく、たとえ大作とまでは言えなくとも文学として確かな価値を有している、という意... (全文表示)
閲覧数や評価数の面ではあまり目立っていませんが、佳作と言って差し支えない作品だと思います。「頑張り賞」的な意味の佳作ではなく、たとえ大作とまでは言えなくとも文学として確かな価値を有している、という意味での佳作です。文章をぱっと見て受ける印象に騙されず、ウマ娘SSというよりは、深い洞察に基づいた精緻な構造のもと、文学的なアプローチで読むべきです。したがって以下の推薦の内容も「文学」に対して行う水準のものにしています。内容は、ウマ娘のメジロアルダンに焦点を当てた短編で、タイトル通り「再上映」をテーマにしています。私としては、この「再上映」というテーマの選び方がまず素晴らしいと思います。「ウマ娘」というコンテンツは、過去の競走馬たちの史実をスポ根風に再構築・解釈したものであって、史実の「再上映」ということができます。作者の言を借りれば、「かつて存在した名馬達の姿を、愛らしい女の子の姿というポップなアイコンに置き換えることによって、より世の中に広く、システマティックに浸透するよう加工し、『再上映』する」という言い方になります。このテーマを強調するために、デ〇ズニーの映画が作中で効果的に使用されています。デ〇ズニーは物語論や文化人類学の知見を活用してシステマティックにストーリーを構築することで知られており、この背景が、史実を「システマティックに浸透するよう加工」するというウマ娘コンテンツの在り方とリンクしていて、作品のテーマを効果的に演出しています。しかし公式が史実に行う「加工」は、必ずしもメジロアルダンに救いをもたらさないというのが現状です。例えば「シンデレラグレイ」におけるメジロアルダンについて、作者は感想への返信で以下のように述べます。「善戦の末、その回の主要キャラクターに惜敗する姿ばかりが描かれています。メインキャラクター達のように苦悩する姿もあまり描かれず、そこにはトレーナーの姿もない」作者はこの状況に対処しようと、作品全体でメジロアルダンを救おうと試みています。メジロアルダンとトレーナーはデ〇ズニーの過去作品の再上映を共に鑑賞し、アルダンの人生が過去の出来事の繰り返しであるかのような「再上映」であっても、作中の言葉で言えば「模倣され尽くした、手垢に塗れた姿」であろうとも、その先にアルダンだけの固有性が宿ることを信じるようになります。そして作者はその固有性を「ロビーの常夜灯」という比喩に帰着させます。投稿作品を見る限り、本作品の作者の表現したいことは、細やかな気持ちの機微や抽象的なテーマに主軸が置かれていることが多いので、ある程度姿勢を正して丁寧に(純文学へ接するときのように)作品に向き合い、内容を解釈することが必要とされる印象です。そして丁寧に読み取っていくと、作品内にちりばめられた小道具、比喩、象徴、そしてストーリー全体が、作品のテーマを効果的に演出するべく最適な配置を目指しているのを感じ取れるでしょう。喩えるならこの作品は、「メジロアルダンを『再上映』から救い出す」、「作品のテーマを伝える」という機能を果たすため最適に設計された、7000文字以下の洗練された工学的構造物として存在します。作者は既に10を超えるメジロアルダンの短編を投稿されていますが、現状私はこの作品が作者の最高峰だと信じ、ここに初めての推薦をするものです。▼読む際の注意事項など細かい点にはなってしまいますが、平均的な文章より三点リーダーが多い印象を受けました。人によってはそのあたりがくどく感じることもあるかもしれません。
推薦:daidains 評価:☆ (参考になった:3/ならなかった:1)
推薦作品:斯く想う故我在り 原作:オリジナル:現代/冒険・バトル
主人公はヒロインの生き方に憧れ、ヒロインは主人公の生き方に憧れる。それだけ聞くと普通のラブストーリーにでも発展しそうではあるのだが、そうは問屋が卸さないのが柳之助クォリティである。「こんな自分の生... (全文表示)
主人公はヒロインの生き方に憧れ、ヒロインは主人公の生き方に憧れる。それだけ聞くと普通のラブストーリーにでも発展しそうではあるのだが、そうは問屋が卸さないのが柳之助クォリティである。「こんな自分の生き方に、憧れの彼(彼女)が憧れているなんて許せない」そんな理由で主人公とヒロインが本気で殺し合う、それが殺し愛、即ち柳之助クオリティ。基本的に柳之助さんの作品全部に言えることだが、台詞回しが絶妙で、かっこいい。最高のタイミングで、最高にカッコいいことを言ってくれる主人公、ヒロイン、その他で、その度に読者の心は揺さぶられっぱなしである。また日常と非日常の書き分けが綺麗で、上手く切り替えているし、自然に導入されていて、先ほどまでの日常的シーンと、急に起こる非日常のシーンのつなぎに違和感を覚えない。そして何より、設定とキャラが上手くかみ合っていて、キャラクターの魅力を最大限に生かしていると思う。この設定だからこそ、このキャラはこう動く、と言うのが非常にわかりやすい。メインキャラクターだけでなく、敵側の心情描写まであるので、ぽっとでのやられキャラと言うのは居らず、敵味方区別なく感情移入することができる。そしてだからこそ、お互いの想いをぶつけ合う戦闘は最高に盛り上がるのだと思う。
推薦:水代 評価:★ (参考になった:15/ならなかった:4)
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